カッカする体を落ち着かせるため、真っ赤なソファの上で、クリーム・ドーナツを頬張った。そして今にいたる。
わたしは口のまわりにべったりとくっついたクリームを拭った。手の甲についたクリームをまじまじと見つめる。
どうしよう——。とんでもないことをしてしまった。わたしは無職‼︎ 家賃が払えない。それどころか、命よりも大事なスマホ代が払えなくなる。大好物な甘いものも、食事も我慢しなきゃ。下手すれば、実家に帰ることになるかもしれない……。この悪循環を乗り切るには、大好きな彼氏の声を聞くしかない。
不安を頭から追い払って、山端さんに言われたことを思い返した。よしよし……だんだんムカついてきた。不安でいるより、イライラしている方がいい。
わたしは正紀が電話に出るなり、今日一日に起きた出来事を、休む間もなく細かく全て語りに語った。
「あり得ない、ほんと」深々とため息をつき、いちご・オレをゴクゴク飲む。「わたしはあんなもの、触りたくない。だって、すごく汚かったんだよ? なんかよく分からないカスがいっぱいついてたし……っていうか、どうしてわたしにさせようとするのって話」
わたしは酔っ払いのやけ酒のように、いちご・オレをグビグビ飲みながら話を続けた。
「ホールとフロアでは、仕事が違うのに。お客さんが食べたあとのお皿だってキモいと思うのに、入れ歯を触らされるなんて」
