わたしはニヤニヤする口元を隠しながら跳ねるようにアパートへ帰った。ゆるされることなら、このままベッドに入って枕を抱きしめたりしながら、さっきの会話を思い返してニヤニヤしていたい——言葉と喉の動きから、初めて知った手の温もりまで。

 だけれど、放課後になってからずっと震えているスマホを、これ以上無視はできなかった。


 正紀:お得意の無視ですか。俺は会うつもりで
    いたのに、なんだかんだ言って、お前が
    会わない方向に持っていってんじゃんか

 正紀:見てすらいないのか?

 正紀:ごめん。昨日は本当に酷いことを言った
    あれは本心じゃない。気の高ぶりだった
    何度でも謝るから許してください。


 わたしは最後のメッセージを読んで笑った。なにこの豹変ぶり。