それからのわたしは怒りでいっぱい。中年男性の帰宅後に、山端さんはお礼もなしに掃除機をかけろと言ったかと思うと、今度はさっさとトレイを運びなさい、テーブルのお皿をさげて——。
「はぁ、あなたってどうして言われないと行動しないの⁉︎」と山端さんは怒鳴った。今日は特にカリカリしていた。「わたしがこんなに忙しくしているっていうのに……。一つくらい、まともな判断と行動力を身につけてくれたら——」
「すみませんねぇ」
わたしは考えるよりも先に、嫌みったらしい口をきいていた。
「山端さんが、自分がしでかした失敗をわたしに押し付けてくれなきゃ、わたしは自分の分の仕事しかできなかったです。ほーんと、気がきかなくってごめんなさぁい。でも安心してください。わたし、辞めますから。そんじゃ、さよーなら」
エプロンを投げ捨てて、店長の横を通り過ぎ、定時の時間より一時間も早く、アパートに帰宅した。
