そうしたら、優希は何も言わずに私を抱きしめた。
しばらくの間、私は優希の腕の中でただひたすらに泣いていた。
「ふっ…っ…はあ…っ…」
ようやく泣き止んだ頃にはもう、日が沈みかけていた。
「大丈夫?」
「…ん…。優希…こそ…大丈夫…?」
「大丈夫大丈夫!さ、帰ろう」
優希はそう言って笑顔を見せて、私を腕の中から解放した。
でも、私は帰ろうとしなかった。
どうしても、最後まで私の話を聞いて欲しかった。
だって私…っ。
…だって私…?
ああ、私は–––。
自分の気持ちに気づいた。
素直になろう。
私はそう思って
「先輩、知らない人と手繋いで…歩いてたの」
と、続きを話し始めた。
突然のことだったから優希も少しびっくりしていたけど、真剣に私に耳を傾けているのが分かった。
「最初は、何か事情があるんだって…自分に言い聞かせてた…。でもね、人気のないところでキスしてたの…。ショックだったな…。…私はすぐにその場を離れて、先輩にメールを送ったの。証拠の写真を添えて…。そしたら先輩、あっさり認めて言ったの。………別れてくれ…って……」
全部話した。ついに。
誰にも言ったことのなかった出来事を。



