「おいおい、ひよっ子魔法使いが何もできない少女達を連れてどうするってんだい? 援軍はたかだか男二人。こっちは数十人」

 ミーナの顔つきが先程の怯えていた表情から変わったのを見て、無駄だとばかりに嘲笑う商会の者や貴族とその護衛達。

 それを受けてヴィオルドがぼそりと呟く。

「そのたかだか男二人に、表と地上の警備がやられたんだけどな」
「なっ!」

 勝利を確信していたのに、それをたった一言で覆されて狼狽する。

 しかし上がやられても今ここで仕留めれば問題はない。さっきまで向こうの方が不利だったのだ。この程度で揺らいでどうする。

「おめぇら、とっととコイツら捕まえて売りさばくぞ!」

 かけ声と共に剣を構え直し、ミーナやヴィオルド達に向かって走り出す。

Föŗśeł(草木よ), žiŗŧşe suŕ rúpěŀ(敵の動きを) fég yĥuï ķeînë(妨害せよ)!」

 ミーナが呪文を唱えると足元が急に揺れ動き、石の床が割れて大きな植物がにょきにょきと生えてきた。

 バランスを崩した商会側に属す人間の足に根が絡み、(つる)が身体に巻き付く。程なくしてあちこちの床から青々とした植物が伸び、そこにいる敵のほとんどから自由を奪った。

「今のうちに上へ! 私についてきて!」

 ミーナが、レネと少女達に向かって叫んだ。全員がついて来るのを確認して、メイド服の裾をはためかせながら進む。足を前へ出す度に白いエプロンのフリルが揺れ、バックリボンが曲線を描いてなびく。

 彼女はヴィオルドを一瞥して、その場を後にした。

「さて、俺達は残党狩りといこうか」

 剣を構えながらヴィオルドが爽やかに言う。彼の構えた剣の刃が、鋭く光った。

 ドルークも遅れを取るまいと続けて剣を構える。

「先輩、ミーナさんって魔法使えたんすね! これなら先輩をギャフンと……いえ何でもないです。そんな目で見ないでください! 俺は敵じゃありませんよ!」