「本当に男だったとは」
「だから言ったじゃん!」
「何で女の格好してるんだ?」
「似合うから! ね、これでもうボクを売る必要がなくなったでしょ?」

 競売場へと続く地下の廊下でレネと男達のやり取りが響く。やっと誤解が解けたレネは売られる心配が減り、少しほっとしている。

「いんや、お前は売る。そういう趣味の奴もいるからな。貴重な分、高く売れるんだぜ」

 それを聞いてさっきの安心はどこへやら、一気に絶望へ叩き押されるレネ。

「さあ、お話は終わりだ。間もなくボクチャンのオンステージだぞ」
「え?」

 会話に夢中で気づかなかったが、目の前には競売場の入り口であろう扉が迫っていた。大きな鉄の扉に圧倒され、足がすくむ。本当はずっと怖かった。

――ああ、家に帰りたい!

 そんな願いもむなしく、ゆっくりと重い扉が開かれる。男達に無理矢理つれられ、レネは中へと進まされた。

 部屋は観戦場のようになっており中央に商人と商品である少女、その周りを同心円の段で囲んでおり、その段に椅子が並べられていた。レネが入った扉は段の裂け目にあり、そこを通れば難なく中央へ行ける。

「ほら、ぼーっとしてねぇで行くぞ」

 自分を繋ぐ鎖を引っ張られ、レネは引きずられるように中央へと移動した。