足音をたてないように階段を下りて、裏口へ進んだ。数日前に油を差したため、静かに開く。

 ひっそりと店を抜け出し、目的地へ向かって音もなく走り出した。目指すは人身売買の会場となっている貴族の屋敷。

 ヴィオルドとドルークが酒場で話しているのを聞いたのは、ミーナである。レネの行方がどうしても気になったのだ。彼女であるとわからないよう布を被り、近すぎず離れすぎずの位置で聞き耳を立てていた。

 二人の話から、ソルバ商会の人身売買、衛兵全体へ連絡するため動くには時間がかかること、会場はジャメルザ伯爵家の地下にあることを知ったミーナ。衛兵が動くのを待っていてはレネが売れてしまうかもしれないと、自分で助けに行く決意をしたのである。

 魔法を使える今、彼女はただのひ弱な小娘ではない。魔法使いなのだ。