色々考えていると蓮に呼ばれて総長室に通された。
「なぁ、お前は何者だ?」
入ってそうそうに聞かれる質問の内容に、笑いそうになる。
「何者って?ただの高校生だよ」
蓮の目を見て告げる。
蓮は悩んだ素振りを見せて私を見据えて言った。
「お前の素性が全く出てこなかった。
明らかに隠されている。」
「だから?」
「隠されてるっつーことは、情報を知られたくないから。知られたくないような情報は大体が 危ねーことだ。」
危ないこと。か、
危ないの種類もたくさんあるけど、蓮の頭には私の危ないは含まれてない。
「蓮。前にも言ったけど、私は姫になるべきじゃないんだよ。調べて分かったでしょ?何も出てこない。そんな何者か分からないような女初めての姫にするべきじゃないんだよ。」
蓮は終始黙っていた。
けど、次に発せられた蓮の言葉に驚いた。
「煌。泣きたいなら泣けよ」
なんのこと?急に何言ってんの?
泣きたくもないのに泣かないよ
「今のお前の顔気づいてるか?」
「え?」
「助けて欲しいって顔してんだよ。」
なんで初めてあったようなやつにわたしの気持ちがわかんのよ。
なんで、せっかくバレないように我慢してたのに言っちゃうのよ。
「ッ!蓮…っ。助けて…」
心の声。
なんで言っちゃったのか自分でも分からない。
でも、
蓮の存在は私を弱くする。
「全部話せ」
そっとベットの縁に座らされて肩を抱かれる。
頭を撫でながら優しくそう言った蓮に私は口を開いた。
〜過去〜
私は親を知らない。
私の親は私を闇取引に使い…捨てた。
私は売られたんだ。
それが3歳の時。
その日から私は毎日のように虐待を受けた。
何かわからない薬も飲まされた。
ご飯なんて一日に1回あるかないか。
光も微かでほぼ闇の中
檻に囲まれた空間で私は育った。
私が12際になる頃。
闇市に出品された。
初めての光だった。
化粧と明るい身衣に驚きながらも手と足と首に付けられた枷が現実を突きつけていた。
再び檻の中に入れられ、その檻は黒色の布で隠された。
数時間すると下が動き 台車のようなものに乗っていたのかと理解した、
ナンバーが呼ばれバッと黒い布が取られると目の前は明るく照らされた。
私の周りは仮面をつけた人達でいっぱいだった。
数字を言い合いその数字がどんどん大きくなっていった。
最後に数字を言った人に私は買われた。
その人は私をふかふかのベッドの上に寝かせてくれた。
数日後私は恐怖を味わった。
その男は私の体が目当てだった。
口に布を詰められ、手はベッドに繋がれたまま私は性虐待を受けた。それは1年と半年続いた。
終わりを告げたのはあるバイクの音だった。
男が出かけて留守の間にドアが蹴破られた。入ってきたのがお兄ちゃんだった。
お兄ちゃんは優しく私を抱きしめて着ていた服を私に着せてくれた。
そのまま私はお兄ちゃんのバイクでお兄ちゃんの家に運ばれた。
「俺の名前は 蒼井 業。兄だと思って接してくれて構わないからな」
ニカッと笑った顔はなんとなく見覚えがあるような気がした。
「うん。。お兄ちゃんはなんで、私を、助けたの?」
純粋な疑問だった。
叫び声もあげれず日に日に内容が酷くなっていくあの日常を私はどこか受け入れていた。
「俺は、1年半前 あの場所にいた」
あの場所とは多分闇市のことを指すんだろう
どこか苦しそうな顔をしたお兄ちゃんは話を続けた。
「お前を 助けるつもりであそこにいたんだ。でも、助けられなかった。こんなに長い間お前を 苦しめていた。 本当に 申し訳ないと思ってる。」
優しい人なんだな。
私は諦めていたのに、お兄ちゃんはずっと私を救おうとしてくれていた。
「ありがとう。お兄ちゃん」
人生で初めての笑った気がした。
「とりあえず、風呂入っといで」
それから私は中学2年生までお兄ちゃんと暮らした。
話し終えて蓮を見ると、悔しそうな顔をしていた。
ゾッと頬に手をやると、ハッとしたようにこちらを見て再びぎゅっと抱きしめられた。
その暖かさは今まで感じていたものの中で1番優しく 心地よかった。
胸にこみあげてくるものがあって。
私は初めて 蓮の前で涙を流した。

