私の日常を壊さないで。
私の夢を壊さないで。
願うことは一つだけ…



2年生に進学してから春休み気分もすっかり抜けた5月の初め。
私のクラスだけ浮き足立っていた。
理由は簡単、黄桜の総長 なんちゃら 蓮がこのクラスの生徒だから。

苗字なんか特に覚えてないけど…

下の名前ですら覚えてない人多いけど、みんなが叫んでるから嫌でも覚えちゃったんだよね。


で、話戻すけど
浮き足立っていた理由はその蓮がいまだにこのクラスに顔を出してないからなのだ。


今か今かと女子達は待ち望んでいるし、自分の属す総長と距離が近くなるのも男子として望んでいたりする。


私はその様子を傍観するだけ。


首はなるべく突っ込みたくない。



なんだけど…



どうしてだか私の隣がその蓮らしい。


登校そうそうに特等席だと心做しか喜んでいたんだけど、隣が空席のまま。

子のクラスで投稿してない人は蓮のみ

必然的に隣が蓮だと分かるわけ


気づいた時は私の友好関係を恨んだよね…
友達いたら変わってもらえたんだからさ…



「はぁ、」


ため息つくと幸せ逃げるとよく言うが私の幸せはこのせいで奪われてるのか。

はたまた 昔の過ちのせいか。


「ふっ」


自傷気味に笑って肩肘をついて授業に耳を傾ける。眠気を誘う教師の声を最後に私の意識はフェードアウトしていった。











トントン


肩に感じる違和感に意識が浮上していく。


トントン


「んぅ?」


寝起きで働かない頭とぼやける視界に唸り声が出る。



「おい」


男の人の声に驚いて頭がはっきりした。

視界もクリアになり映し出されるのは、


黒髪が無造作に遊ばれ、制服を着くずした男。
顔は整っており、不機嫌なのか眉が上がっている。
気崩された制服の首元からきらきら光る銀のネックレスが見える。
よく見ると耳にも何個か光るピアス。


なんでこんなやつが私に話しかけてんの?


ムクリと起き上がって男を見る。


「何?」

寝てるのを起こされていい気持ちがするわけがない。いつもより低い声が出るのも許して欲しい。

「お前。ここ俺の席なんだけど?」


は?

え、は?


ここって一番後ろの窓際。

きちんと確認したし、間違えてるはずない。


「何言ってんの?人の睡眠邪魔しといて」


冷たく言い放ってまた寝る体勢をとる。

なのに

グイッと肩を引っ張られ起き上がらされてしまった。


「俺がここの席っつったらここなんだよ」


なに自己中な事言ってんの?
何様?

「はぁ、あんたの命令なんて聞かないよ。私は眠たいの邪魔しないでよ」

男を睨むように見る。

すると、

「ふっ、お前面白いな。来い」


怒っていた顔の口角が上がり意味不明なことを言ったかと思えば腕を引っ張られ立ち上がらされる。

立ち上がった時気づいたのは私たちのことをクラス中の人達が見ていたこと。

なんで?

まだ寝ていた頭の疑問が一瞬にして消えた。

気づいたんだ。

私の話している相手が誰なのか、

この注目の浴びよう。


これが噂の蓮だったから。



引っ張られて廊下に出ると

上がるのは悲鳴。


なんであんなやつ。みたいな視線がグサグサ刺さる。


クラスの子以外も見に来てたのか…



どこに連れていかれているのか分からないけど、私は今後の学校生活がこれまでのようにいかないことは安易に想像がついていた。