「とりゃっ!」
『とうっ!』


そんなことを言い合いながら、家中を子供みたいに走り回った。
馬鹿なことしてるなぁって分かってる。
でも、それがなんだか楽しくて、幸せで、面白い。
こんな風に遊ぶのも良いなぁと思う。
そんな時だった。


『うわっ』


私が椅子の足に自分の足を引っ掛けてしまったのだ。
痛っ……‼‼
体が傾く。
目を(つぶ)っていると、ぽすっという音でもない……でもドスンとした音でもない。
そんな音が鳴った。
私は彼の上に倒れてしまったのだ。


「……っぶねー!セーーーフッ!」


彼は笑顔でそう言った。


『ごめんごめん…!』


離れようとするのに、彼がぎゅっと抱きついてくるもんだから、私も彼にぎゅっと抱きついた。


「危ないからもうおしまいね。分かった?」
『ふぁ〜い…。』
「ふぁ〜いじゃない!」


彼がぷくーっと頬を膨らませる。
それが可愛くて、面白くって、ふっと吹き出してしまった。


「ちょっと!今、馬鹿にしたでしょ!」
『ち…ちがっ……ははははっ!か、可愛いなって思っただけー!』


そう言うと、彼も私も吹き出して笑ってしまった。
二人の笑い声が家に響く。


「ははっ……はー。でも、でもだよ?」
『はー…。はー…。ん?』
「可愛いのはそっちだから。」


彼はそう言って、私にキスを落とした。