「花帆、俺の名前呼んで」

「え?」

「いいから」



いくら腕が解かれたからといっても、まだまだ至近距離。


飛鳥くんの名前を呼ぶなんてどうってことないはずなのに、なんでこんなにドキドキするんだろう。




「そんな改まって言われたら……恥ずかしいよ」

「名前呼ぶだけだろ?」

「そ、そうだけど」


あぁ、ダメだ。さっきから熱い。心臓がうるさい。



必死に平常心を装おうと、小さく息を吐いた。


ただ名前を呼ぶだけでこんなに時間がかかるなんて、飛鳥くんはなにか特別な魔法でも使ってるんじゃないかとさえ思えてしまう。



「あすか、くん」

「うん、もう一回」

「飛鳥くん」