「俺の名前を呼ぶのは、花帆だけでいい」

「え……?」



いま、なんて……?



すっぽりと飛鳥くんの腕の中に閉じ込められているせいで、飛鳥くんがいまなんて言ったのかが聞こえない。


顔を上げて聞き返そうにも、簡単に抜けられないからそれもできなかった。




……それに、さっきから。



ドキ、ドキ。


飛鳥くんの心臓の音が聞こえてきて、彼の言葉に集中できない自分もいて。



こんなに冷静そうな飛鳥くんがドキドキしてることに気づいてしまったら、私もドキドキが加速しそうだ。




「花帆?」

「……〜っ、見ないで」


よりにもよって、顔に熱が集中してきたタイミングで飛鳥くんは私を離した。


なんだか恥ずかしくて手で顔を覆うけど、グイッと手首を捕まえられる。