けど飛鳥くんは、そんなの知らないんだろうな。


彼は、私なら自分の言うことは絶対聞くと思ってるから。というか、これまでずっと私たちはそうだったから。



私は、飛鳥くんが嫌だって言うことはしないと小さい頃から決めている。


我ながら、私の世界は飛鳥くんが中心なのかもしれない。



包まれた腕をゆっくり解こうとすると、それは案外簡単に外れた。


しっかりと向き直り、飛鳥くんの目を見て言う。



「わかった。あんまりこの髪はしないことにするよ。ただし、今日みたいに暑い日は許してね?じゃないと私、暑くて溶けちゃう」

「ん」

「えへへ、ありがとう、飛鳥くん」



するとすっかり私の言い分も受け入れ、納得してくれた飛鳥くん。


そこでふと、周りにいたはずの掘田くん、菊川くん、凛ちゃんの声が全く聞こえないことに気がついた。