唇の熱はもうすっかり冷めているはずなのに、思い出しただけでまた熱を帯びてしまう。
私……、本当に飛鳥くんと……?
さっきのことを思い出しては、鼓動が早くなる。
……嫌だったわけじゃない。むしろ、嬉しかった。
濡れた頬を拭って、大きく深呼吸を1回。
……飛鳥くんは、なにを考えてるんだろう。あんなの、勘違いしない方がおかしいよ。
「あれ、飛鳥くんだけ?花帆は?」
「なんか寝てるみたいで。もう少ししたら起きますよ、きっと」
下の階から、お母さんと飛鳥くんの話し声が聞こえる。
しばらくしてから、飛鳥くんが玄関を出る音が聞こえた。



