「えっ、これ菊川くんが作ったの?」
「あ、意外って思ったでしょ」
少しムッとする菊川くんがおかしくて、思わず笑みがこぼれた。
だって、くまさん型なんだもん、これ。
菊川くんのことだから料理もお手の物なのはイメージがつくけど、さすがにくまさんは予想外すぎるよ。
「くまだからってナメないでよ?美味しすぎて佐藤さんのほっぺた落ちるから」
「えー、なにそれ」
今日ここに来て、初めて笑ったかもしれない。
菊川くんの言うことが面白くて、緊張してモヤモヤしていた気持ちが少し緩んだ気がする。
言われたとおり、菊川くんの作ったくまさんクッキーは冗談抜きでほっぺたが落ちそうだった。
「これいま試作中で店で出してないんだ。また来てくれたらサービスするよ」
「え、本当?」
あまりにも美味しすぎて、菊川くんの提案に乗りそうになった。……でも、そのとき。



