飛鳥くんはクールなんかじゃない




ずっと近くにいたはずなのに、なんだか知らない飛鳥くんがそこにいるみたい。




「……それ、重いでしょ。俺が持ってくから、菊川さんはあっちのオーダー取って」

「えっ、あ、ありがとうございます……っ」



初めて、飛鳥くんの優しさが他の子に向けられることを嫌だと思った。


飛鳥くんが優しいことなんて百も承知。けれどクールなイメージで通ってるそれは、あまり知られていないこと。



私だけが知ってる、なんて、少し自惚れてた自分がバカみたいだ。



「気になる?」

「……え?」


ジッと見つめすぎたのかもしれない。


飛鳥くんと一華ちゃんを遮るかのように視界に入ってきたのは、少し眉を下げた菊川くんだった。