飛鳥くんはクールなんかじゃない




「……で?なんで花帆がここにいんの」

「あ……、やっぱり怒ってる?」

「別に怒ってはないけど」



私がカフェラテを飲んでる横で、飛鳥くんはやっぱり少し不機嫌そう。


お昼前だからなのか、いまはお客さんが少ない。




「怒ってるじゃん」

「怒ってない」


明らかに不機嫌オーラを漂わせておいて、あくまでも飛鳥くんは「怒ってない」を貫く。


こんなに美味しいカフェラテを作ってくれても、それとこれとは話が別なんだ、きっと。



「もう、あす……」

「渡くんっ」


もう一度、飛鳥くんの名前を呼ぼうと思った。


呼んで、ちゃんと聞いて、怒ってるなら謝ろうと思って。



けれど、そんな私の声に被って、久しぶりに聴くソプラノが耳を通った。