その夜、

「にぃにぃ、沖縄に来れない?」

琉音は、8歳上の兄・奏多(かなた)に電話をした。

『お小遣いなら兄ちゃん、やれないぞ?』

受話器の向こう側では、奏多が呑気に笑っている。

「そうじゃないさぁ。
にぃにぃに助けてほしい人がいるんだよね」

『…助けてほしい人?
おいおい、俺は医者じゃないぞ』

「一昨年メジャーデビューしたaqua Blueにしか無理なんだよ」

奏多はaqua Blueと言うバンドのリーダーをしている。

『なんだなんだ、メンバーを誰かくれるのか?』

奏多は、まさかな…と思いながらも琉音に聞く。

「そうだよ。
こっちの歌姫がOKを出せばの話だけど」

『わかった。
近いうちに顔を出すから』

琉音の言葉に、奏多は思わず笑った。