楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

「メロ。夢のような時間だったわ。ありがとう」
「俺も楽しかった」
「……終わらないでほしいな」
「薔子」

メロは初めて私の名前を呼んだ。

「俺はすごくいい名前だと思う。薔薇のように美しいお前にぴったりだ」
「メロ…?」

一輪の薔薇を差し出して、彼は私に優しく微笑む。

「また満月の日に会おう。それまでは猫の姿でお前のそばにいるから」

メロの体が眩い光に包まれた。

「…っ!」

目を開けると、男の人ではなく黒猫がいた。
私の手には一輪の薔薇があった。

これは、夢ではない。

「メロ、ありがとう」

あなたのおかげで、少しだけこの名前が好きになった。

「好きだよ、メロ」
「ニャー」

黒猫を抱いて、家へと戻る。

私が一歩踏み出すと、薔薇の花びらがふわりと舞った。