社長から仕事を言い渡された日から数日後に例の作曲家──サミダレから音源が届き、以降時間を作っては愛と二人音楽スタジオに通い歌う日々である。

“天空を泳ぐ”──曲のタイトルだ。

美しい曲だと、天は思った。光が降るような、一音一音が軽やかで、眩しいけれど柔らかな。

愛がどう思っているのかは知らない。

だからだろうか。すり合わせが足りていないのだろうか。それともそもそも相性が悪い?

「ぜんっぜん合わねえ……」

絶望気味に天は呟く。愛は隣で黙り込んだまま、いつも通りの無表情……いや、いつも以上に冷たい仏頂面だ。

歌唱力の差とか声質の違いとかってもんじゃなく、二人の歌はどこか噛み合わない。しっくりこない。形はぴったりなのに柄が全く異なるジグソーパズルのピースみたいだ。

ぐでん、と天はスタジオの床に寝転がる。このところやけに忙しいのだ。そろそろ期末テストも近づいてきていて、学業もおろそかにできない。