気づいているのかいないのか、もはやなんでもいいのか知らないが、ダイチはそれだけで嬉しそうだ。

ちらりと彼の隣に視線をやる。天とまともに目が合った。

彼は一瞬柔らかく目を細めた。挨拶代わりなのだと思う。愛も三秒ほど凝視することで挨拶に代えた。

お互い仕事中なので、ここに来る前事務所でテストの点数を比べ合ったときとはモードが異なる。

海にも瞬きを送って、それですれ違う。

ダイチが未練たらたら振り返っていたが、周りに小突かれてとぼとぼ去っていった。

──さて、“Venus”の出番の前に“PLANET”のパフォーマンスを観られる。

内心楽しみにしていることに、愛は自分では気づいていなかった。