収録日から約一週間後。

朝の教室で愛は持参した菓子を祐実に献上したところだった。

「料理を教えてもらったお礼です」

「ありがとう」

紙袋の中を見て、幼なじみは嬉しそうに微笑む。

「スペインか」

「よくわかったね」

「ポルボロン。さすがだ」

はしゃいだ声を上げている。どうも本気で喜んでいるらしい。愛はスペインからこの菓子を送ってきた人物に思いを馳せる。

祐実へのお礼の品を考えていたところ、タイミングよく送られてきたので、これ幸いと包んだのだった。

「ところでポル……なんて?」

「ポルボロン。書いてあるだろ」

「スペイン語でね……?」

包みに記載されている言語は、それを買ったであろうスペインのもので、当然愛には読めない。

祐実には読めるのだろうか。読めても不思議には思わないが。

十年以上の付き合いだというのに、まったく底の知れない友人である。