「……じゃあ、せーので出せよ」

「うん」

「……同時にだからな!?」

「せーの」

「おいっ!」

慌てて数学2Bの解答用紙を突き出した。本日返されたばかり、真っ赤なペンで採点の結果が書かれている。

天は72点。愛は、

「……っしゃあ勝ったァ!」

63点! と叫んだ天に、彼女は冷たい一瞥をくれる。

「数学ではね。合計点では私が上」

「…………」

途端に天は仏頂面になる。そろそろ行くぞ、と扉の向こうから声がかかった。

「時間だ。じゃあ、また後で」

「……ああ。また」

別々の車だが行き先は同じだ。互いのパフォーマンスを生で観るのは、久々だったりする。

どんな歌声で、仕草で、視線で、観客を魅了するのか。

自分は相手を、魅了できるだろうか。