惑星のダンス

「……綺麗だな」

返事はなかった。独り言だと思われたのだろうか。

横を見ると愛は、ここではないどこかを見つめた顔をしていた。

瞬間、わかった。なぜ噛み合わないのか。

「寂しいのか?」

愛がびっくりした顔で見上げてきた。いや、傍目には無表情なのだが。最近、無表情の表情を読めるようになってきた。些細な変化を見落とさぬように。

さっき、愛の目には寂しそうな色があった。

ふっと彼女は視線を逸らす。手に持っていた館内図を指さした。

「クラゲを見たい」

「いやいいけど……誤魔化すな。仕事で来たんだろ」

「誤魔化してなんかない。それに、」

歩き出しながら彼女は言った。

「仕事じゃない。デートだから、プライベート」

「……っ」

天は沈黙した。愛は振り返らない。何度か深呼吸をして、ようやく天は華奢な背を追いかけた。