不意にパタパタといくつもの足音がして、背中に強い衝撃を感じた。


「千代ちゃんっ!」


前のめりに躓きそうになって踏ん張る時、手のひらから何かがすり抜ける感触がした。

嫌な感触。ずっとずっと慣れることなんてできない。


「大丈夫!?」


陽くんが私の腕を掴んで引き上げた。


「最近の小学生こわ」


「風船…」


飛んでいってしまったんだろうか。


高く、高く、もう届かないところへ。


「大丈夫だよ、ちゃんと持ってる」


陽くんは苦笑して「ほら」と左手に掴んだ風船を見せた。


腰の力が抜けた。


へたり、とその場にしゃがみ込むと、陽くんは慌てたように私の顔を覗き込んだ。


「どこか怪我した?それとも気分悪い?」


「ううん。違うくて…」