「……もうやだ……」

生きているのが辛い。

そのくせ、死ぬのが怖い。

そして、いつ死ぬかは分からない。

今日かもしれないし、明日かもしれないし……もしかしたら、この戦争を生き残れるかもしれない。



私、倉石梨花は街頭で一人さ迷っていた。

だってもう帰る家なんてないし、ご飯もない。周りにはそういう境遇の人しかいない。裕福な人はとっくに殺されたんだもの。

ここ、エストラルはかつて都会だった。割と、今でもその名残がある。

古びたビル、廃墟になったデパート、ホテル、マンション。

何故みんなそこに住まないのかって?

……そこにいても、すぐに殺されて終わりだ。

私たちは、今、大国であるロステアゼルムから攻められているのだから。



私たちが最初に見たのは、大型の銃だった。名前とか知らないけど、取り敢えず一発撃てば人が沢山死んじゃうような、そんな銃だってことは分かった。

そしてたくさん兵士がきて、まずは片っ端から人を殺していった。

大量虐殺だよ。

見る目もなかった。

なんとか逃げ延びた人たちの多くは、その後見つかってどこかに連れていかれちゃった。

噂では、どこかで労働させられているらしい。



──私の家族は、私の目の前で殺された。

……ううん、正確には、私の背後で殺された。

「お前だけは、逃げろ」って、お父さんが私の背中を突き飛ばしてくれて。

運よく街路樹の茂みに隠れられたんだ。

その直後だった。

銃声と、断末魔。

いやだ、聞きたくない。逃げたい。

そう思ったけど、脚が棒のようになって動かなくて、無理だった。

嗚咽を必死に隠すので精一杯だった。



辺りに静けさが戻った後、私はそっと街路樹から這い出た。

……無残だった。

私のお父さんとお母さんは、あっけなく殺されてしまった。

それも、ふたりは血がほとんど出ていなくて、ほんとうに綺麗で。

今にも生き返りそうなのに……!!

何度泣いても、叫んでも、無駄だった。



もう、私を守ってくれる人はいない。

大丈夫だよ、って声を掛けてくれる人がいない。

大好きだった、お父さんとお母さんは、いない。

放心状態で、私は街中を歩き回った。

もういいや。

私も殺してよ。

せっかくお父さんに守ってもらった命だけど、このままじゃ、辛いよ。

そんなとき、遠目に人影が見えた──