……本当にダメ。
“2年前”
その単語を聞くだけでも喉に何かがつっかえたみたいに息苦しくなって息が上手く吸えなくなりそうになる。
「深呼吸、深呼吸だよ、そら」
いつの間にか私の隣を歩いていた紅羽(くれは)がスーハーと大袈裟に深呼吸をしてみせた。
「……うん。ありがとう、紅羽」
そうだよ。
転校初日からこんなんじゃ先が持たない。
心が弱いならせめて強くあろうと気持ちくらいは強く持たなきゃ。
そして、私達が東京に来た理由を、目的を決して忘れてはいけない───
コンコン
「失礼、します」
事前に渡された校内の地図は全員丸暗記していたため、校舎に入ってから一度も迷わずに理事長室までたどり着いた。
「…いらっしゃい。君たちが転校生かな?」
……この男が。
理事長の、芹沢 千歳…
チラッと一瞬見た時に視界に入ったのはダークブラウンの髪に黒い瞳を持つ一般的に爽やかイケメンと称されるタイプの男だった。
そして、どう見てもアラフォーには見えない。
せいぜい30歳がいいところだ。
でも、今年確か37なはず。



