驚く私を置いて車で向かった先は、
スポーツクラブだった。
今日は、実家に行くため休んだのに何で……?
意味が分からなかったが課長が駐車場に
車を停めて降りるので私も慌てて降りた。
中に入ると陸上専用のトラックに向かった。
すると篠原さんが私達に気づいて近付いてくれた。

「やぁ、どうだった?ご挨拶は?」

「……やっぱり。想定内でした」

「そうか、まぁ仕方がないさ。
だが、まだ諦めることはない。すでに
大会には、連絡して取り下げてもらったから。
これから活躍をして挽回すればいい」

えっ……大会?
課長と篠原さんの会話の内容がよく分からなかった。
何を活躍して挽回する気だろうか?

「あの……これは、一体……?」

「日向さん。もう一度パラリンピックに
出場する気になったらしいですよ!」

私が不思議そうに質問すると後ろから
人の気配がした。驚いて振り返ると夏美さんだった。
えっ?夏美さん……パラリンピックって?

「亮平さん。パラリンピックに出るのですか?」

頭の中がついて行けず混乱する。
えっ?でも課長は、引退したはずでは……?

「あぁ……と言っても申し込んだのは、
予選候補が集められた大会だ。
全国でも選ばれた多くの選手が
パラリンピックの候補生として出場する。
それにトップになれるかで次の東京パラリンピックの
選手になれるかが協議で決まる。
あくまでも候補生としてだ!」

えっ……そうなの!?
私は、驚いて2人を見た。

「日向君は、別の大会には、毎年出場をしているのだが
予選大会には、辞退していたんだ。
今回は、俺が頼んで一度断った辞退を
取り下げてもらった。
彼の積み上げた功績や記録もあるから
選ばれるのは、夢ではないよ!」

そう言って詳しく説明してくれた。
課長がパラリンピックの選手としてもう一度
表舞台に立つ。それは、ぜひ見てみたいと思った。
でも、何で今さら……?