課長は、平然としていた。
あくまでも隠す気はないようだ。

「噂にしたい奴は、させておけばいい。
こちらは、悪いことをしている訳ではないのだ。
堂々としていればいい」

相変わらずストイックで堂々とした態度だった。
凄いなぁ……カッコいい。
そんな課長を私は、素敵だと思った。

「まぁ、笑い者にした奴らは、倍返しだけどな」

課長は、フッと不敵に笑ってきた。
いや、やっぱり鬼だ……。
課長にしたら周りの噂は、敵ではないようだ。
誰で在ろうと容赦はしない。
しかし、そんな私達に危機が迫っていたことは、
その時は気づきもしなかった。

課長との恋愛は、その後も続いた。
休日に一緒に過ごしたり、スポーツクラブで
一緒にトレーニングしたり
まだまだ走るのに慣れないが一生懸命やっていた。
そんな数ヵ月後のことだった。
私は、課長と一緒に食材を買い込んで歩いていた。
今日は、課長宅で夕食を作る予定だった。

「ちょっと買い過ぎちゃいましたね」

「なに。また作ればいい」

そう言いながら雨の中を傘を差して歩いていたら
交差点で赤信号になったので待った。
しばらくして青になったので渡ると
目の前に綺麗な女性が歩いて来るのが見えた。

うわぁ~綺麗な人。
その時は、そんな風に思っていた。
するとその女性は、こちらを見て驚いた表情をしてきた。

「亮平……!?」

綺麗な女性は、確かにそう言っていた。
亮平って……課長の下の名前だわ。
私は、驚いて課長を見た。
すると課長も驚いた表情して立ち止まった。
だが一瞬で眉を寄せる。

「亮平さん……?」

私が課長の名前を呼ぶとハッとした表情する。
そして気にしないように前に歩き出した。
私も慌てて追いかけた。いいのだろうか?
もしかして知り合い?
するとその綺麗な女性は、傘を投げ捨てて
課長の腕を掴んだ。