「お前ら……朝っぱらからベラベラと
無駄口を叩いているなんて随分と余裕があるじゃねーか?
それなら、いつもより早く
仕事を片付けてくれるのだよな?
なら、さっさと働け!!」

朝一番の雷が落ちた。
それは……もう大きな雷だった。
周りは、慌てて仕事に戻って行った。

ふぅっ……助かったわ。
ホッと胸を撫で下ろした。
すると課長が席を立ち上がり私のところに来た。
えっ?私は、驚いて課長を見た。

「結衣。カバンを持ってちょっと来い」

えぇっ?今!?
しかも会社なのに下の名前を呼んでくるし。
意味が分からなかったが課長に言われた以上
私は、課長の跡をついて行くことにした。
オフィスから出て行く時、周りの視線が痛かった。
オフィスから出ると課長は、自分の財布から
2万円を取り出して私に渡してきた。

「昨日の服のままだったな。
気づいてやれなくて悪かったな。
今からでいいからこれで新しい服を買って来い。
嫌なら下着もだ。
足りない分は、後で請求しろ」

えぇっ!?そんな……お金なんて
課長の思わない厚意に驚いてしまった。
新しい服って……。
そんな気を遣わなくてもいいのに。

「えっ……でも。仕事がありますし……」

また来たばかりなのに途中で抜け出すなんて
出来る訳がない。
頼まれた仕事だってあるのに。

「あぁ、その心配はするな。お前の仕事は全部。
お前を笑い者した奴らにやらせるから。
なんせ人を笑うだけの余裕のある奴らばかりだ。
大いにやってくれるだろう」

課長は、さらりと凄いことを言い放った。
お、鬼だ……!?
課長は、自分を笑い者にした部下達には容赦ない。
ちょっと可哀想になってきた。
すると課長は、私の頭をポンッと撫でてくれた。

「これは、俺のミスだ。
女性であるお前に恥をかかせて悪かったな。
アイツらを許してやれ」

そう言うとクスッと微笑んでくれた。
課長の何気ない優しさが伝わってくる。
撫でられた頭が温かい。嬉しい……。
それなら私は、その厚意に甘えることにした。
頭を下げて行こうとしたら

「さて、アイツらを二度と笑い者に出来ないように
たっぷりと可愛がってやるか」とニヤリと笑いながら
ボソッと呟くとオフィスに入って行った。か、課長!?