「嫌だなぁ~日向さん。
バラさないで下さいよ~せっかくもう少しで2人共。
僕の手のひらに乗りそうだったのに」

えぇっ?どういうこと!?
私も夏美さんもワケが分からずに動揺していた。
課長は、さらにため息を吐きながら教えてくれた。

「結衣、騙されるな。コイツは、もともと
人に群れることが好きじゃない。
人懐っこくて温和な性格や容姿のせいで
騙されやすいが裏で利用出来る奴と利用出来ない奴を
仕分けているような腹黒い部分を持っている奴だぞ」

そ、そうなの!?
すると松岡さんは、クスクスと笑った。

「それは、ちょっと違いますよ。日向さん。
僕は、もともとあまり人に執着しないたちなんです。
去ろうが近寄ろうが……何とも思わない。
だから誰とでも上手く接することが出来るんです。
まぁ利用出来る人は、より近づいて利用しますが
でも……それは、あくまでも失明する前の話です。
失明をしてからは、人の声に敏感になりました。
人の優しさに興味を持つようにもなった」

松岡……さん?
夏美さんも不安そうに松岡さんを見ていた。
松岡さんの意外な性格を知る。
私も意外過ぎる性格に戸惑ってしまう。

「それに……加藤や日向さん、源さんなどに
出会って人に興味を持つようになった。
失明したお陰で今まで見ていなかったモノが
見えるようになりました。何より
夏美さんに出会えて……人を愛することを覚えた。
これは、僕なりの誇りと成長だと思っています!」

誇らしげ松岡さんは、語った。
もしかしたら……彼もまた障害やパラリンピックの
お陰で運命的な出会いをしたのかもしれない。
そして、新しい道を見つけたんだわ。
だが微妙に信じていない様子の課長だった。
眉を寄せていた。

「どうもお前が言うと胡散臭く思えてしまう。
盲目のペテン師だしな……お前は」

「アハハッ……嫌だなぁ~日向さんったら。
信用して下さいよ?これは、本当です。
それに、日向さんとの出会いのお陰でもあるんですよ。
僕……今まで出会ってきた友人の中で、こんなに
話が合う人なんて居なかった。
思考が似ていると言うか頭の使い方が
似ているせいですかね?」

「まぁ……確かに。
お前の頭の使い方は、いつも感心をさせられる。
俺もこんなに話が合う奴は、なかなか居なかった。
それに……倍返しのやり方など
あれは、いつも参考にさせてもらっている」

「フフッ……そうでしょ?」

松岡さんの言葉にフッと課長は、笑った。
えっ……?
それに対してクスッと笑う松岡さんの後ろには、
黒いオーラを漂わしていた。あ、似てる!!