Alone Again

「うぅん、呼び出し音が彼の気持ちを教えてくれたわ。
本気で私を愛しているのであれば最後まで待っていてくれる筈でしょ?」


「でも君は、それを望んではなかった?」


急ぎ過ぎた質問をしたのかもしれない…
だが横顔の翳りが疑問符の後に続く蟠りを濁している以上、その本意を彼女が隠しているのは明白だ。


「慈しみを綺麗事な嘘で弔えたら気を巡らす必要もないけど…そこまで、あざとくはなれないわ。
ただ…彼も同じ空気をあの日察知していたとするなら、判断を決めかねた私の意思を読み解く意図があったのかも…呼び出し音の向こうでね」


だが僕が求めている答えはそこではない。
メールに添えられた最後の一文が心の残照であるなら、彼女の想いも雨音に染められていた筈だ。
彼女の弱音を遮っている一存を聞き出せない限り〈プライドの傘〉だけで、その雨を凌ぐ事など到底不可能だ。


『挫折をする度に夢が遠退いてく…その恐怖は今も影の様に付きまとってるわ』


以前、彼女は笑顔でそう嘆いていた…だがそこに見え隠れしているのは〈最愛の友〉が示唆する二人の温度差だ。
同じ夢を共有する両者の関係が上下から恋愛へと推移するのはありふれた感情移入だが、人生の岐路ともなれば、そこまでスムーズとはいかない。
特に彼女の場合だと、両天秤に掛けるのは深淵に横たわるプライマリーな私心との整合性であって恩情ではない…もし後者を短絡的に正当化すればシビアな重圧となりうるからだ。
余り有る冷静さをなおざりにし、なし崩す彼を庇っているのはその口振りから見出だせるのだが、それだけに彼女の苦悩は計り知れない…


「当時の私は岩場に取り残された引き潮の様に暗く淀んでいたの。
尋常ではない周囲との軋轢は、凍える季節へとただ濁っていくだけの私を執拗に追い詰めたわ…綺麗事だと貶され誹謗中傷されたり、陰湿な陰口に耐えながらね。
でも彼だけは違った…
『夢を蔑ろにする前に立ち返れるのであれば何も厭わない』奮い立たせてくれた彼への想いに気付いた時、既に惹かれていたわ…
自分を欺かないと誓ったのは“愛”という後ろ楯がなければ曖昧な気持ちのまま夢を引きずるだけの傍観者で終わっていたのは分かっていたから…
踏み留まる事が出来たのも、夢を勝ち取るまで支えるという彼との実直な約束があったからなの」


色褪せたジレンマがメンタルを蝕み自尊心を覆い隠す帷となれば、冷静と衝動の間で揺れ動く心の差違は静かなる軋轢となり、無意識な心へと鬱積していく…
それを自己欺瞞と解するなら、苛まれた彼女を狡猾だと蔑むよりも酷な話だ。


「でも彼はその過程で約束を歪めた。
離別を恐れての束縛は嫉妬が主な要因だけど彼にその兆候がないとするなら、プロポーズは破綻覚悟のタイトロープだったのかも」


しかし彼女は、その見解をもアッサリと否定する。