尚は、俺が引っ越して来て初めてできた友達だ。そして、俺は尚にだけは震災で被災した時のことを話し、PTSDがひどいことも言った。

尚は理解をしてくれて、俺の話を一生懸命聞いてくれた。そして、「剣道をもう一度しようよ」と誘ってくれた。剣道と尚があったから、まだ俺は前を向ける日が多い。

尚とは、わかり合える友達ーーーいや、親友だ。

「そういえば、今日合同練習のことを話すらしい」

「今週の土曜日、強豪の白鴎高校との練習だろ。うちの学校、そんなに強くないんだけどな」

「まあ、顧問の遠藤先生曰く、「強豪と練習をすれば、いい経験になるだろう」って」

「今年こそは行きてえよなぁ。全国大会!」

「その前に東海大会でしょ」

「あ、そうだよな……。去年は三回戦で負けたんだよなぁ」

尚とそんなことを話しながら歩く。夏に向かっていく風は、どこか熱い。これから運動部にとっては勝負の夏が始まる。

俺と尚はまだ二年生だが、三年生の先輩にとっては最後の夏だ。今まで支えてくれた先輩たちにできることは、全国大会まで一緒に行くこと。