ベッドから起き上がれない私がその知らせを聞いたのは、いつのまにか咲いていた桜の花びらが風に揺れて散り始めた頃だった。

心くんが亡くなった。

涙が出なかったのは、麻子の最期も心くんの最期も会えなかったから、今ひとつ実感が湧かないせい。

また学校に行けば会える気がした。

朝が弱い麻子がチャイムギリギリで駆け込んできて。お昼休みには裏庭に集まって4人でご飯を食べて。心くんと真月の部活が終わるまで、麻子と他愛もない話をして。4人で帰宅するとき、お腹減ったと近くのコンビニで買い食いして。夜は心くんと電話でお喋りして。

学校に行けばきっと、会える。
当たり前だった毎日が当たり前に続いている。そんなバカみたいな妄想を信じて、早く退院しようとリハビリに励んだ。

「さすが、お若いから直りが早いですね」

感心した様子の医者に退院の許可を貰ったのは事故から1ヶ月経った4月のことだった。