俺は1月から奈良県の工場勤務になり、朝陽や空と一緒に暮らし始めた。
朝陽は俺と会わなかった半年の間に、地元の人と随分親しくなったらしく、沢山の人が空の誕生を喜んでくれた。

「私、こんなに幸せでいいのかな」

時々、朝陽は不安そうな声を出す。

「いいんだよ。きっと心やアサだってそうなることを望んでいるから」

俺と心を通わせるようになって、朝陽はポツリポツリと中学時代のことを語ってくれるようになった。

当時の朝陽はずっと、自分を責めていたらしい。心やアサを失ったのは自分のせいだ、と。だから、自分が幸せになることに抵抗があるのだ、と。

大切な人を失うには、俺達はあまりに幼すぎた。あの頃に戻れるならば、俺は何度だって13歳の朝陽を抱きしめるのに。

「なぁ、朝陽。俺とアサはあの日、自分達の意志であの噴水前にいたんだ。そして事故にあった。だから、あの事故は朝陽のせいじゃない。心だってそうだ。あいつは自分の意志で、朝陽を抱きしめて守った。心無い人が朝陽を傷つけることを言ったかもしれない。でもな、お前が責任を感じる必要ないんだ。お前は幸せになればいいんだ」

あの頃には戻れない。
もう大切な人達は返ってこない。

だから、俺は今の朝陽を抱きしめる。