「……真月。私、あなたが好きだよ?でも、結婚してここを出るのは嫌。真紀子さんと康晴さんに、空を抱いてほしい」

真月が机越しに抱きしめてきた。
やっと好きって言ってくれたなと耳元で真月が呟く。

真月のプロポーズにわがままな返事をしてしまった。

でも、これは譲れない。
不安だったとき、そばにいてくれた二人に空の誕生を祝ってほしい。

「だから……ごめんなさい。私……」
「朝陽の願い叶えるよ」

身体を引き離そうとしたのに、ぎゅっと真月に抱きしめられる。

「うちの会社、奈良県の工場あっただろ?そっちに異動願い出すよ。別に朝陽のいない企画に未練ないし」
「いやいや、あなた企画部のホープでしょう!?」
「朝陽が居なくなって、めっきり駄目なんだ。だからしばらく休めって企画部長から工場勤務を打診されてたところ」
「うそー!?」
「さっきここに来る途中、工場見かけたよ。多分ここから車で1時間ぐらいで着く。だからひとまず、康晴さんと真紀子さんに俺がここに暮らしてもいいか聞きに行こう」