康晴さんと真紀子さんが奥のプライベートルームに引っ込むと真月が私の前の席に腰掛けた。

「妊娠してたんだな」

こればっかりは隠しようもない事実だから素直に頷いた。

「……俺の子だよな?」
「……私の子よ」
「そりゃあ、お前のお腹にいるんだからお前の子だけどさ」

素直に認めない私に真月は呆れた顔をする。

「……どうして仕事を辞めたんだ?うちの会社なら育休制度だって整っているし、誰にも言わずに辞める必要どこにあった?」

口調こそ堪えていたものの、真月は怒っていた。彼は普段、そんなにお喋りな人じゃない。次々と言葉が紡がれるぐらい怒っていることが、その眉間のシワからも分かった。

どうして怒るの?
あなたには大切な人がいるんじゃないの?

『ずっと好きだったんです!心の中に違う人がいることは分かっています。でも、私……諦めきれないんです』

宮端さんからの告白に『しょうがないな』と返したのは誰?

……宮端さんには笑いかけていたくせに。
私が15年そばにいても成し遂げられなかったこと。