「妊娠……?」

私の告白に真月はしばらく呆然とした。言葉を失っているようだった。

「これから寒くなるから、室内で話さないか?」

沈黙を破ったのは真月でも私でもなく、様子を伺っていた康晴さんだ。

康晴さんは知っている。お腹の子が真月の子どもであることを。そして、真月に告げることなくここに逃げてきたことも。

(ちゃんと話し合いなさい)

康晴さんの目がそう言っていた。

お店の中に入ると、はなが温もりを求めて擦り寄ってきた。突然の来訪者に驚く鼓動を沈めたくてその細い体を腕に抱いた。

「真月くんだよな?長く見ない間に立派になったな」
「おじさんこそお元気そうで」

人の声が聞こえたのか裏にあるプライベートルームから、真紀子さんも顔を出した。

「あら!真月くんじゃない!」
「ご無沙汰してます。おばさん」

康晴さんと真紀子さん、そして真月は久しぶりの再会を喜んでいた。でも私は素直に喜べない……。

「お袋からお二人が喫茶店を開いたって聞いて、調べたら朝陽がここにいることを知って……。居ても立っても居られなくて来たんです。……途中迷ってしまってこんな時間になりましたけど……」
「いいのいいの。この時間なら私達も手が空くから返ってゆっくりお話しできるわよ」

真紀子さんはそう言って笑う。

……何を話せというのだろう。
今更なんで真月は会いに来たんだろう。

腕の中のはなが気が変わって逃げていく。すがりつくものがなくなった腕をダランと下ろした所に、康晴さんがコーヒーを持ってきてくれた。

「真月くん。狭い所だがゆっくりしていってください」

康晴さんオススメのこころ珈琲と私用のノンカフェインの珈琲がテーブルに置かれた。

「ありがとうございます」
「僕達は奥に引っ込むけれど、2人は思う存分話し合いなさい」
「そうよ。朝陽ちゃん、ここまで来たら逃げちゃダメよ。2人がどんな結論を出そうと私達はあなたの味方だからね」