16時55分。2人が大桟橋に着くと、港に停泊していた大型船がちょうど出港するところだった。
「船、こんなに大きいんですね。近くで見ると迫力を感じます」
サユリは間近で出港した船を見てはしゃいでいるようだったが、タクトは上の空という様子で生返事をする。
「先輩、どうしたんですか?」
サユリは、もしかしたら自分が嫌われてるのではないかと心配になって尋ねる。
「あっ、ごめん」
我に返った様子で、サユリのほうに向き直る。聞いてほしいことがあるんだ……タクトは、真剣な表情になってつづける。
「俺のこと、助けてください」
すがるような眼差しでサユリを見つめる。今のタクトにとって、唯一の頼れる存在がサユリだった。
「もちろんです!先輩のことを精一杯サポートします。」
サユリは、タクトに頼られたことが嬉しかった。自分のすべてをタクトに捧げたい。そう思えるほど、目の前にいる先輩はサユリにとって魅力的なのだ。
一般的な愛の告白とは程遠い。現在のタクトは、普通の恋愛をするためのスタート地点にすら立てていないのかもしれない。しかし、底が見えないほどの深い愛情と信頼感が、2人の間を満たしているのは明らかである。
「いつも僕を支えてくれてありがとう。これからも、古葉さんを幸せにしていきたい」
一度言葉を切る。そして、覚悟を決めて次の言葉を紡ぎだす。
「いや、絶対に幸せにします」
一世一代の宣言をしたタクトが決意のこもった眼でサユリの顔を見つめると、サユリの顔がさらに赤く染まっていく。その表情をみたタクトの顔も、夕陽に負けないくらい真っ赤に染まる。この5分足らずの間に、緊張、不安、そして喜びの感情を一気に味わうこととなり、タクトの心臓は忙しく動き続けている。一方のサユリも、言葉にできないほどの幸福感に満たされている。
「お願いが2つあるんだけど、聞いてもらえるかな?」
「お願いって何ですか?」
一瞬の間が開いた後、タクトが口を開く。
「1つ目は、俺の通帳を預かってほしい。俺、金を無駄遣いする癖があるだろ。だから、毎月必要な金額だけ渡してほしいんだ。そうすれば、ギャンブルとかでお金を使いすぎることはなくなると思う」
「えっ!通帳を預かっちゃって大丈夫ですか?」
サユリは、どんな頼みでも聞き入れるつもりだったが、予想を超える突拍子もないお願いにただただ驚くしかなかった。
「大丈夫。そうしないと、いずれ破産しちゃうし、古葉さんなら信頼できるから大丈夫だよ」
人生で5本の指に入るほどの驚きがい一段落すると、通帳を預けてもらえるほど信頼されていることへの感動がこみあげてきた。
タクトは、2つ目のお願いがあると言い、さらに言葉をつづけた。
「ギャンブル以外の楽しいことをたくさん教えてくれますか」
「もちろんです!二人でいろんな場所に行って、たくさん楽しいことしましょう!」
即答したサユリの声は弾んでいた。
「私からもひとつお願いがあります」
サユリは、思いついたように口を開く。
「敬語はやめましょう。私に対しては、ため口で接してください」
「どうしてですか?」
タクトは不思議そうに尋ねる。年齢にかかわらず、尊敬できる人に対しては敬語を使うことがタクトのポリシーなので、年下であるサユリに対しても敬語を使ってきた。
「恋人同士というのは、普通ため口で話すものなんです。なので私たちも気軽な感じでしゃべりましょう!」
「分かりました」
「先輩、それもため口になってる」
2人は、くすくすと笑い合った。
日の入り寸前の真っ赤な夕陽が、2人のこれからを祝福するように照らしていた。
「船、こんなに大きいんですね。近くで見ると迫力を感じます」
サユリは間近で出港した船を見てはしゃいでいるようだったが、タクトは上の空という様子で生返事をする。
「先輩、どうしたんですか?」
サユリは、もしかしたら自分が嫌われてるのではないかと心配になって尋ねる。
「あっ、ごめん」
我に返った様子で、サユリのほうに向き直る。聞いてほしいことがあるんだ……タクトは、真剣な表情になってつづける。
「俺のこと、助けてください」
すがるような眼差しでサユリを見つめる。今のタクトにとって、唯一の頼れる存在がサユリだった。
「もちろんです!先輩のことを精一杯サポートします。」
サユリは、タクトに頼られたことが嬉しかった。自分のすべてをタクトに捧げたい。そう思えるほど、目の前にいる先輩はサユリにとって魅力的なのだ。
一般的な愛の告白とは程遠い。現在のタクトは、普通の恋愛をするためのスタート地点にすら立てていないのかもしれない。しかし、底が見えないほどの深い愛情と信頼感が、2人の間を満たしているのは明らかである。
「いつも僕を支えてくれてありがとう。これからも、古葉さんを幸せにしていきたい」
一度言葉を切る。そして、覚悟を決めて次の言葉を紡ぎだす。
「いや、絶対に幸せにします」
一世一代の宣言をしたタクトが決意のこもった眼でサユリの顔を見つめると、サユリの顔がさらに赤く染まっていく。その表情をみたタクトの顔も、夕陽に負けないくらい真っ赤に染まる。この5分足らずの間に、緊張、不安、そして喜びの感情を一気に味わうこととなり、タクトの心臓は忙しく動き続けている。一方のサユリも、言葉にできないほどの幸福感に満たされている。
「お願いが2つあるんだけど、聞いてもらえるかな?」
「お願いって何ですか?」
一瞬の間が開いた後、タクトが口を開く。
「1つ目は、俺の通帳を預かってほしい。俺、金を無駄遣いする癖があるだろ。だから、毎月必要な金額だけ渡してほしいんだ。そうすれば、ギャンブルとかでお金を使いすぎることはなくなると思う」
「えっ!通帳を預かっちゃって大丈夫ですか?」
サユリは、どんな頼みでも聞き入れるつもりだったが、予想を超える突拍子もないお願いにただただ驚くしかなかった。
「大丈夫。そうしないと、いずれ破産しちゃうし、古葉さんなら信頼できるから大丈夫だよ」
人生で5本の指に入るほどの驚きがい一段落すると、通帳を預けてもらえるほど信頼されていることへの感動がこみあげてきた。
タクトは、2つ目のお願いがあると言い、さらに言葉をつづけた。
「ギャンブル以外の楽しいことをたくさん教えてくれますか」
「もちろんです!二人でいろんな場所に行って、たくさん楽しいことしましょう!」
即答したサユリの声は弾んでいた。
「私からもひとつお願いがあります」
サユリは、思いついたように口を開く。
「敬語はやめましょう。私に対しては、ため口で接してください」
「どうしてですか?」
タクトは不思議そうに尋ねる。年齢にかかわらず、尊敬できる人に対しては敬語を使うことがタクトのポリシーなので、年下であるサユリに対しても敬語を使ってきた。
「恋人同士というのは、普通ため口で話すものなんです。なので私たちも気軽な感じでしゃべりましょう!」
「分かりました」
「先輩、それもため口になってる」
2人は、くすくすと笑い合った。
日の入り寸前の真っ赤な夕陽が、2人のこれからを祝福するように照らしていた。

