10月上旬の競馬場。いくぶん暑さは和らいだが、場内は人々の熱気に包まれている。今日は、スプリンターズステークス(注1)という大きなレースが開催されるのだ。タクトは、このレースで2番人気の馬を狙っている。1番人気の馬は、充分な実績を残しており飛び抜けた人気になっているのだが、ジョッキーが不調なため勝てないと予想した。競馬は馬の力だけでは勝てない。上に乗るジョッキーの判断力があってこそ、レースに勝利できるのだ。というわけで、2番人気の馬に1万円を賭けることにした。
ファンファーレに包まれながら、全馬ゲートに収まる。ゲートが開き、スタートが切られた。タクトが賭けた2番人気の馬は素晴らしいスタートを切り、先頭に立った。1番人気の馬は中盤で脚を溜め、最後の直線に余力を残すように走っている。
タクトが賭けた馬を先頭に、十数頭のサラブレッドがカーブを曲がってくる。最後の直線、1番人気の馬はラストスパートをかけようとする。しかし、前にいる馬が邪魔になって、加速することができない。
「馬鹿野郎!」「ふざけんな!」
1番人気の馬に賭けていた客たちから怒号が飛び交う。タクトの予想通りのレース展開となった。
「このまま!逃げ粘れ!」
タクトは、自分が賭けた馬に声援を送る。ラスト50メートル地点。もうすぐゴールというタイミングで、3番人気の馬が外側から迫ってくる。頼む、抜かれるな。1着でゴールしてくれ。タクトは祈る気持ちでレースを見つめる。だが、そんな願いもむなしく、外側から追い抜かされてしまった。馬券は一瞬で紙切れに変わった。
1番人気の馬が負けるところまで予想できていただけに、余計に悔しい。3番人気の馬に賭けておけばよかったと後悔した。
途中のコンビニで買ったさきイカを口にくわえ、イヤフォンで尾崎豊の曲を聴きながら長い家路を進む。帰りの電車内がすごく混雑していたので、一つ手前の駅から歩くことにした。頭の中では、すでに来週のレースのことを考えていた。
(注1)スプリンターズステークス 毎年10月下旬に中山競馬場で行われる、高 松宮記念と並ぶ短距離王者決定戦。
ファンファーレに包まれながら、全馬ゲートに収まる。ゲートが開き、スタートが切られた。タクトが賭けた2番人気の馬は素晴らしいスタートを切り、先頭に立った。1番人気の馬は中盤で脚を溜め、最後の直線に余力を残すように走っている。
タクトが賭けた馬を先頭に、十数頭のサラブレッドがカーブを曲がってくる。最後の直線、1番人気の馬はラストスパートをかけようとする。しかし、前にいる馬が邪魔になって、加速することができない。
「馬鹿野郎!」「ふざけんな!」
1番人気の馬に賭けていた客たちから怒号が飛び交う。タクトの予想通りのレース展開となった。
「このまま!逃げ粘れ!」
タクトは、自分が賭けた馬に声援を送る。ラスト50メートル地点。もうすぐゴールというタイミングで、3番人気の馬が外側から迫ってくる。頼む、抜かれるな。1着でゴールしてくれ。タクトは祈る気持ちでレースを見つめる。だが、そんな願いもむなしく、外側から追い抜かされてしまった。馬券は一瞬で紙切れに変わった。
1番人気の馬が負けるところまで予想できていただけに、余計に悔しい。3番人気の馬に賭けておけばよかったと後悔した。
途中のコンビニで買ったさきイカを口にくわえ、イヤフォンで尾崎豊の曲を聴きながら長い家路を進む。帰りの電車内がすごく混雑していたので、一つ手前の駅から歩くことにした。頭の中では、すでに来週のレースのことを考えていた。
(注1)スプリンターズステークス 毎年10月下旬に中山競馬場で行われる、高 松宮記念と並ぶ短距離王者決定戦。

