院内の至るところにMIYAMOのロゴが入った医療機器を見かけ、多くの患者さんの命を救う手助けをしている。今までロゴを見るとツラかったが、今ではそんな気持ちは微塵もない。

なにがあったのかと問われれば、それは篠宮先生の存在だろう。小さな灯火がだんだんと大きくなっていることを認めざるを得ない。

「はぁ、今日も疲れた」

激務を終えて病院を出る。

まだ夕方なのに外はすでに暗くて、吹きつける風も冷たい。すっかり冬だなぁと思いながら見上げた夜空には、きれいな満月が浮かんでいた。

「よう」

肩をポンと叩かれ、思わず飛び上がりそうになる。勢いよく振り返ればスーツ姿の男。優だ。

「久しぶりだな」

口元に傲慢な含み笑いを浮かべて、私を見る目はあのときと同じ。

反射的にサッと距離を取るように後ずさる。

この前といい今日といい、いったいなんだというのだろう。

「なにか……用でしょうか?」

「驚いたよ、まさかきみが帝都大一のエリート外科医の篠宮先生と婚約中だなんて」