愛しいものでも見るかのように細められる瞳に、胸が高鳴った。こんなの、私じゃない。そう思うのに止められない。

その場から逃げるようとしたとき、ナース服の胸ポケットに入れていた院内用のスマホが鳴った。

ナースコールだ。画面にはルームナンバーと患者氏名が表記されていて、私は篠宮先生に「失礼します」と断ってから足早に病室へ向かった。

とにかく離れられたことにホッとして、スマホをしまおうとしたところ、本体の裏側に入った『MIYAMO』のロゴを見つける。

そっか、このスマホもMIYAMOの製品なんだ。ここ数年で開発されて、とても話題になっている院内用のスマホ。

自分が担当する病室をタップして選択すると、ナースコールが専用のスマホに鳴って、知らせてくれる。また部屋番号とパスワードを入力すれば、個人情報や術中の記録、看護記録、診療録なども見られるようになっている優れもの。

さらには心電図モニターの波形やアラームもすべて転送されてくる仕組みになっていて、どこにいても患者さんの状態を知ることができるようになっている。

それだけではない。AEDのように心電図の波形を自動解析したり、必要であればドクターコールの要請をスマホが教えてくれたり、緊急時や手が離せないときにはドクターに自動で電話をかけてくれる仕組みだ。

この製品は日本国内だけではなく、海外にもその性能が認められて普及しつつあるようで、どうやらMIYAMOの社内でも今一番の目玉製品らしい。