ミーティングルームでは篠宮先生が待機していた。青いスクラブの上から白衣を羽織り爽やかな微笑を浮かべている。
お兄ちゃんの背中に隠れるようにして無機質な白い部屋の中へと入る。
「どうぞ、おかけ下さい」
お母さんに続いてお兄ちゃん留美子さん、沙羅ちゃんが座る。私も沙羅ちゃんの隣に腰掛けた。
私の家族だということは爽子にでも聞いたのか、驚く様子はない。
「外科の篠宮といいます。よろしくお願いします。早速ですが」
「しゅ、主人は大丈夫なんですか?」
未だ動揺しているお母さんがそう訊ねる。ミーティングルーム内は緊迫しているけれど、篠宮先生の持つ穏やかな雰囲気があまりそれを感じさせない。
「結論から言いますと、腸管の一部が穿孔していて、すぐに手術が必要な状態です」
「手術!?」
お母さんやお兄ちゃん、留美子さんが驚愕の表情を浮かべる。
「ええ、なんらかの原因で腸管に穴が開いてしまったんです。穴を塞がないことにはやがて腹膜炎を起こして、日下部さんの場合すでに起こしかけているんですが、全身に菌が回り敗血症になります。敗血症になるとショックを起こして、最悪の場合命に関わります」
「そ、そんな」
こんなにひどく困惑しているお母さんは初めてだ。いつどんなときでも頼もしかったのに、お父さんのことになるとこんなふうになるなんて。



