隙を見せないようにしようと思っても、あっさりとその壁を飛び越え、心の奥底の深い部分に触れてくる。篠宮先生は油断ならない人物だ。
「寝つきがよくなるように、ジャーマンカモマイルを淹れたんだ。リラックス効果もあるから、ゆっくり飲むといい」
そんなふうに言われてしまっては、断ることなんてできない。単純だと自分でも思うけれど、私は湯気の立ち昇るカップを手にした。
ジャーマンカモマイルはほのかに甘みもあって、リラックスするにはもってこいのハーブティー。口にするとスッキリとした味わいで、とても飲みやすかった。
「美味しい」
「そうだろ? 俺のイチオシだ」
「はい」
あっという間に飲み切ってしまった。
しばらくするといい具合にリラックス効果も高まって、眠気が襲ってくる。
時間も遅く、本来ならすでに寝ている時間。
「篠宮先生は、明日はお仕事ですか?」
とは言っても、もう0時をすぎているので今日なのだが。
「ああ。朝から出てそのまま当直だ」
当直ということは明後日の夕方まで仕事ということになる。
「私は休みなので、朝出るときに一緒に帰りますね。それでは、おやすみなさい」
「連絡先を教えてくれないか? これっきりになってしまうのは、嫌なんだ」