だけどなにかにつまづき、私は「きゃあ」という小さな悲鳴を上げながらソファーへ倒れこむ。

運が悪かったというべきなのか、篠宮先生の上に覆いかぶさるような形になってしまった。

「す、すみません」

慌てて身体を起こそうとするが、手をつく場所がなく、またソファーの上も安定しないためなかなか起き上がれない。

もたもたしていると、クスクスと笑われて身体が動かなくなった。

「大胆だな」

「ち、違います、そんなんじゃありません」

愉快そうに笑う声が聞こえて、その距離の近さに驚く。すぐそばに感じる気配に背筋がゾクッとした。密着した場所から熱が伝わって、身体の奥が激しく疼く。

どうしてこんな気持ちになるのか、自分でもよくわからない。とにかくこの人のそばにいてはダメだ。

「は、離してください」

無理やり胸を押し返すと身体はあっさりと離れた。距離を取り、心を落ち着かせる。

篠宮先生は余裕たっぷりな含み笑いを浮かべて、まるで何事もなかったかのようだ。

「いい傾向だな」

意味深な発言が気になりつつも、見上げた先の破顔になにも言えなくなる。

どういうわけか、私はこの顔にとても弱い。