「す、すごい……」
十分わかりきっていたはずなのに、それでも言わずにはいられなかった。最上階の部屋はワンフロアに一部屋しかないらしく、エレベーターを降りた瞬間から異空間のように思えた。
ワインレッドの絨毯が一面に敷き詰められ、壁には二号サイズの風景画が飾られている。
ロビーはちょっとした広場のようになっていて、洋モダンをイメージしたようなオフホワイトのシックなソファーとウォールナットのテーブルが置かれ、寛げるようになっている。
エレベーターを降りた瞬間から、部屋の中にいるのではないかというような錯覚に陥った。
「こっちだ」
キョロキョロしていると、再び手を取られ引っ張られる。なにがなんだかわからないまま、促されて部屋の中へと足を踏み入れた。
言うまでもなく部屋の中もすごく広い。玄関にはウォークインクローゼットがついており、白くピカピカの床が照明に反射してまぶしく光っている。
差し出されたスリッパを履いてドキドキしながら歩いた。
「この部屋を使ってくれ。アメニティ類は一応全部揃っているとは思うが、足りない分は言ってくれればフロントで用意してもらうから遠慮なく言ってくれ」
「え、あ、はい」
案内されたのは玄関から一番近い部屋だった。てっきりリビングへ通されると思っていた私は、篠宮先生の意外な言葉に拍子抜けする。



