どうやら部屋へ上がるエレベーターはまた別のようで、フロントを過ぎると慣れたように奥へ奥へと進んで行く。

唖然としながら着いて行くけれど、とんでもない場所にきてしまったのではないだろうかと不安になる。

再びエレベーターに乗ると、最上階である三十五階のボタンが押されたことに、私はまた驚きが隠せずに目を剥いた。

都心のタワーマンションの最上階に住んでいるなんて、さすがというべきか。

音もなく上がって行くエレベーターに感心していると、ガラス張りになった窓からは都会の夜景が一望できた。

上がっていくにつれて視界がどんどん広がっていき、思わず感嘆の声が漏れそうになる。けれど、思い直して唇を一文字に引き結ぶ。

ここできれいなんて口にしようものなら、まさに篠宮先生の策略にハマってしまったも同然。恋人同士ならまだしも、私たちはそんな関係ではない。

景色を見てポーッとしていると、隣でフッと笑う気配がした。

「ここからの眺めは最高だろう?」

「ええ、まぁ」

夜景に罪はないものね。

篠宮先生の目を見ず夜景にだけ意識を集中させる私に、篠宮先生はクスクス笑うだけだった。