こんなの反則だよ。
ドキドキしないわけがない。
「それにどうしたんですか、スーツだなんて。もしかして、どこかへ出かける最中だったとか?」
今からパーティーだと言われて納得してしまうほどカッコよさが際立っている。
「決まってるだろ? 柚に会いにきたんだ」
私の手を取り優しく引き寄せる。抗うことなんてできなくて、されるがままにその腕に包まれた。
ドキンドキンと高鳴る心臓。こんなに密着していたら、きっと篠宮先生にも聞こえているだろう。
「あ、あの、離して」
「無理だ」
「どうして」
「そんなの決まっているだろう?」
篠宮先生が私の耳元でニヤリと笑ったのが気配でわかった。
「柚のことが好きだからだよ。もう勝手に俺の前からいなくなるな。この数日、会えなくて気が狂いそうだった」
「で、でも、私……」
天音さんはなんとかすると言ってくれたけれど、本当に大丈夫なのだろうか。
「なにも言わなくていい。柚のことは俺が全力で守るから」
背中に回された手がギュッと私の身体を包み込む。
すると安心感が胸いっぱいに広がった。
ああ、私、ずっとこの腕に、篠宮先生にこうしてほしかったんだ。



