こんなにも恋い焦がれてたまらない存在になっていたことに、離れてみて初めて気がついた。失ってからでは遅いのに、大切なものに気づくのが遅すぎたんだ。

けれどなす術もなくて八方塞がり。

これからのことだって考えなきゃいけないのに、頭の中は篠宮先生のことでいっぱいだった。

次の日、真也は約束通り私に婚約者を紹介した。というよりも、お昼過ぎに起きて階下に降りると楽しそうな笑い声が聞こえたのだ。

真也の隣で笑う人物を見て、私は驚きのあまり目を瞬かせながら二度見する。

「さ、爽子!? どうして?」

「柚!?」

もしかして、いや、もしかしなくても真也の婚約者って爽子なの?

こんな偶然があるの?

「なんだよ、お前ら知り合いなの?」

爽子に恋人ができたことは知ってたけど、その相手がまさか真也だったとは誰が予想しただろうか。

「同じ病院の同期よ。爽子とは、プライベートで遊ぶほど仲がよくて」

「そうなのか? 世間って狭いんだな。昨日言ってた俺の婚約者だよ」

真也は戸惑いながらも嬉しそうな照れ笑いを浮かべる。その隣で爽子も頬を赤らめていた。

改めて見るとお似合いのふたり。私の大好きなふたりが知らないところで繋がっていたことに驚いたけれど、真也の婚約者が爽子だと知って嬉しい気持ちでいっぱいになっていく。