キスしてるということは頭ではすぐに理解できたけれど、いきなりすぎて目を開けて固まることしかできない。

対する篠宮先生は慣れたように目を閉じて余裕がありそうだ。

目を閉じていても魅力があって、その姿にドキドキしてる私は本当にどうかしている。ううん、なによりも、今この状況が嫌じゃないと思ってる時点でおかしいとしか言いようがない。

「は、甘いな」

唇を離した先生は未だ熱のこもった視線で、まっすぐに私を見つめていた。耳元で囁かれた声に背筋がゾクッとして、身体の奥のほうがキュンと疼いた。

角度を変えて何度も落とされる甘くて強引なキスは私を翻弄させるには十分で、手にしていたワイングラスを落としそうになる。

「わっ」

数万円のグラス!

手から滑り落ちそうになったグラスを慌てて両手で強く掴む。それと同時に篠宮先生の手が私の手の上に重なった。

さり気なく私の手からワイングラスを奪うと、そばにあった台の上にそっと置く。よかった、数万円のワイングラスが割れなくて。

「ワイングラスではなく、俺のことだけ考えてろ」

ホッとしたのもつかの間、鋭い声が飛んできた。